ヱヴァンゲリヲン 新劇場版：序 /7点：良作｡映画館で観ても損はない

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 通常版 [DVD]

【あらすじ】
　
　およそ人類の半数近くが死に絶えた未曾有の大災害“セカンド・インパクト”から15年｡
　14歳の少年､碇シンジは､音信不通となっていた父親からの呼び出しを受け､第3新東京市で出迎えを待っていた｡
　待ち呆けるシンジの目の前で､不意に“使徒”と呼ばれる巨大生物と国連軍との激しい交戦が始まる。
　混乱の最中､父の部下と名乗る葛城ミサトと合流したシンジは､特務機関NERV本部にて父との再会を果たす｡
　しかし､父の口から発せられたのは息子との再開を喜ぶ言葉ではなく､使徒との戦いを強制する冷たい言葉だった｡
　事態に理解も納得も出来ないまま､シンジは巨大なヒト型兵器､エヴァンゲリオンで出撃する…

【感想】
　
　レンタルDVDの全滅状態が続く本作が､ようやくレンタルできたので早速鑑賞｡
　1995年から公開され､空前のブームを巻き起こしたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の"新解釈"作品です｡
　リメイクでも続編でもない､と紹介されていますが､今作に限っては紛うことなきリメイク作品でした｡
　
　所詮再利用コンテンツ､流石に食傷気味だろ…と､期待せずに鑑賞したのですが､予想以上に面白かったです｡
　何しろ、本作は単純明快な『正義のロボットvs悪の怪獣』な序盤を描いた作品｡
　後半の超展開っぷりが(感情的に)理解できなかった僕にとって､エヴァの黄金期をぎゅっとまとめた本作が面白くない訳が有りませんでした｡
　
　アニメ技術､特に"萌え"表現の革命が目覚しいここ数年を経ても､未だキャラクターに古臭さを感じないのは､当時既に完成していたことの裏づけでしょうか｡ええ､かく言う僕自身も存分に萌えさせて頂きました｡個性豊かな使徒たちに｡(サキエルたんかわいいよサキエルたん｡)
　公開当時､劇場で観なかったことが非常に悔やまれます｡
　
　さて､作品について『TVアニメ版と余り変わっていない』というレビューが多い本作ですが､自分としては､あれ?思ったより変わってんじゃん､と言う感想を持ちました｡
　確かにストーリーの流れはほぼ一緒なんですが､見栄えとシーンの繋ぎが一新されただけで､印象がガラッと変わったと強く感じました｡
　また､話が成り立つギリギリのラインまで場面を削ぎ落としている為に非常に展開が早く､盛り上がるシーンのオンパレード状態｡10分も経たずに最初のvsサキエルのシーンまで話が進むほど｡
　とにかく､密度の高い作品になっていました｡
　
　オーバーテクノロジーと日本語が違和感なく混在する世界観が､更に洗練されているのも好印象｡
　EVAのカタパルト(拘束具?)の左部に力強く『左』と書いてあったり､ヤシマ作戦で発電所の電力が供給されていく描写に日本の地名が多く表示されていたりなど､『日本語ってカッコイイ!』と思わせる数々の演出にカタルシスを感じまくります｡
　
　また､現在の技術で作り直された各種使徒､特にラミエル(八面体の青い子)のギミックや効果音は素晴らしかったです｡
　基本は無機質なデザインなのにも関わらず､生き物っぽく見えるのは演出の賜物ですね｡なぎ払えー!
　背水の陣的なシチュエーション､それを強調する為に再構成された脚本も相まって､半端なく燃えます｡
　『やったか!!』→『やってない…』の流れは､分かっているのに物凄い落胆と絶望が楽しめます｡
　シンジ君が叫ぶのには鳥肌｡これぞロボットアニメ!エヴァのクセに熱い!素晴らしい!
　
　…と､リメイクされて大幅に良くなった点は多いのですが､自宅での鑑賞上､致命的な欠点が一点｡
　それは､音声のダイナミックレンジが広すぎるところ｡
　劇場で大音量で鑑賞する事を前提として製作されているので､仕方ないとは思うんですが､シンジ君や綾波のやりとりを聞き取る為にTVのボリュームを上げると､直後に戦闘シーンが始まって爆音にびっくり､ボリュームを大急ぎで下げる､と言うストレスフルな作りになっています｡防音設備がよほどしっかりしてないと､夜中に観れないんじゃないんでしょうか｡｡
　腹から声出して呟いてくれよ!と無理な注文の一つもしたくなってしまいます｡
　
　しかしながら､10年越しのEVA､非常に楽しめる作品に仕上がっていました｡
　この"序"に限って言えば､単純明快な怪獣アニメとして良く出来ていると思うので､怪獣､ロボットアニメが好きでEVAシリーズ未見の方にもオススメです｡(怪獣アニメ好きでエヴァを見たことの無い人間って居るの?)
　庵野さんには､この調子で新約EVA3部(4部?)作､悔いの無いように完走して頂きたいです｡
　(悔いがあるからリメイクしてるんですよね?)
　
　続編"破"は2008年秋予定との事｡次こそは劇場で見てやるぞー!

【蛇足】

• 鑑賞中､要所要所の台詞を覚えている自分に引いた｡なんだかんだ言ってエヴァ好きだなあ｡
• 2015年にカセットテープは…｡演出上､折り返す様子が絵的に素晴らしいのは分かるんですが…､iP○dじゃないのね｡
• UCCコーヒー自重しる｡サブタイトルを"UCC Coffee"にしても違和感ないよ｡
• EVANGELIONなんだから､"ヱ""ヲ"は流石に不自然だと思う｡"WEVANGELIWON"にするならともかく…｡(トップをねらえ!の"ヱクセリヲン"の前例を見ると､ガイナックスの癖か??)なんかオタクをヲタクと表現する､マスコミ的な痛さに通じる物があって嫌だなぁ｡