劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲/9点:名作。観ないと損!

【あらすじ】
 
 人々がポケットモンスター(縮めてポケモン)と呼ばれる不思議な生き物と共存する世界での出来事。
 幻のポケモン・ミュウのまつ毛を元に、人工的に作り出されたポケモンミュウツー
 彼は、人間のエゴから人工的に造られた、という生立ちから自らの存在意義を見出せず、苦しんでいた。
 そして、自分勝手な人間達への憎しみから、人類に対する逆襲を開始するのだった…。

【感想】
 
 もはや日本の誇る世界的コンテンツの一つなった、ポケットモンスターの劇場版アニメ第一弾。
 本作は子供から大人まで、誰でも楽しめる傑作でした。
 この後の劇場版ポケモンも、興味本位で何作か観てみましたが、基本は勧善懲悪で子供向けと言わざるを得ない作品ばかりでした。。
 残念ながら今のところ、この作品を越える劇場版ポケモンは製作されていない、と言えると思います。
 
 遺伝子技術によって生まれたコピーは、どう生きれば良いのか?
 生きていくための居場所はあるのか?生きていく権利はあるのか?
 もしその存在が自我を持ったなら、その自我は一体誰のものなのか?
 
 この作品の公開当時はクローン技術の発達が目覚しく、クローン羊のドリーが話題になった時期ということもあり、大変重いテーマの作品に感じられました。
 
 もし仮に、オリジナルとコピーがこうして出会ったら、戦いは避けられないのだと思います。
 何故争うのか、本人自体も良くわからないまま、お互いに拒絶してしまう事でしょう。
 劇中に、オリジナルとコピーがお互いに動けなくなるまで闘う、と言う、非常に悲しく、痛みを伴うシーンがあります。
 同じ生き物同士で争いあう愚かさ、悲しさを端的に表した、素晴らしいシーンだと思います。
 このシーンを見れば、誰が見ても「馬鹿馬鹿しいな〜」と思うはずなのですが、宇宙から地球を見下ろしてみれば、我々人間だって、同じ事をしてるんだと思います。ポケモンたちは、劇中で自らの愚かさに気づくことが出来ましたが、人間がその愚かさに気づくのはいつになるのでしょうか。
 
 ポケモンという一見子供向けの見た目でコーティングされては居ますが、生き物が生きることの意味、お互いをいがみあう愚かさについて、考えるきっかけを提供する作品になっていると思います。
 当然、この難問について、アニメごとき(失礼)が明確な答えを提示できるわけではないのですが、ミュウツーをはじめとした、複製されたポケモンたちの生き様、そしてそれを見守る主人公達の背中に、きっと何かを感じる事が出来ることでしょう。
 
 当然、ポケモンの世界観を知っていた方が楽しめます。
 ですので、ポケモン好きなら+1点。
 本作未見でポケモン好きの方は、今すぐレンタル屋に足を運び、ご覧になることをオススメします。

【蛇足】

  • オープニングで、イシツブテを電撃で退けるピカチュウにクソワロタ。ゲーム本編を遊べばその面白さが分かります。
  • サトシの「やめろー!!」の叫び声は、観客の気持ちをストレートにスクリーンの奥に伝えるいいシーンでした。
  • ピカチュウがサトシを起こそうと10まんボルトするシーンは何度見ても泣ける…。現に今、思い出して泣けてきた…。
  • サトシが復活したから良かったモノの、復活しなかったらどうなったんでしょう。戦争かしら。悲しいなあ。