サウンドオブサンダー/5点:暇つぶしにどうぞ

【あらすじ】
 
 時は西暦2055年。人類はついにタイムスリップの実現に成功していた。ある民間企業は、その技術を利用して白亜紀での恐竜ハンティングツアーを商品化する。
 過去への干渉は"現在"へ大きな影響を与えてしまう為、細心の注意を払ってツアーは実施されていたが、ある時、過去から"何か"が現代へ持ち込まれてしまう。過去に生じた歴史のひずみは、2055年の現在へ劇的な天変地異をもたらす。
 世界は、獰猛な生物の跋扈するジャングルのような世界に侵食されていく…。
 この時間に生じたひずみを元通りにする事は、果たして可能なのだろうか?

【感想】
 
 SF作家レイ・ブラッドベリの短編「いかずちの音」をベースに作られた、SFパニックホラー(?)作品。予告編をどこかで目にして、これは面白そう!と思いながら、タイトル名が解らずなかなか観れなかった映画です。
 TSUTAYAで発掘に成功したのでレンタルで鑑賞。実に魅力的なあらすじの示す通り、大変面白い映画でした。屈折した意味で。
 
 さて、一見安っぽく見られがちなこの映画ですが、総制作費はなんと、およそ100億(!?)円。
 …とは言っても、前田氏のレビュー(From 超映画批評さま)によると、本作品制作中にプロダクション会社が倒産するなど、政治的なやりとりを経て完成した、超難産作品との事。その経緯を聞くと、よくぞここまでまとめあげたもんだ!と褒めてあげたくなります。あんまりまとまってないけど。
 
 タイムマシン作ったらこんな危険なツアーより他にやる事あるだろ、とか、リスクマネジメント甘すぎだろ、とか、ピンチの切り抜け方が余りにもご都合主義過ぎる、とか、脚本への突っ込みどころは多数。何よりも、物語の肝となる、『事件が起きたタイミングへタイムスリップするための理論』が、一番の突っ込みどころなのは困り物です。何?スリングショット理論って。


   「いや、そのりくつはおかしい。」
     ,. -──- 、
   /   /⌒ i'⌒iヽ、   「時間の変化の波を避けるため
  /   ,.-'ゝ__,.・・_ノ-、ヽ   変化が起きる前まで遡れば問題ない」
  i ‐'''ナ''ー-- ● =''''''リ      _,....:-‐‐‐-.、
  l -‐i''''~ニ-‐,.... !....,ー`ナ      `r'=、-、、:::::::ヽr_
   !. t´ r''"´、_,::、::::}ノ`     ,.i'・ ,!_`,!::::::::::::ヽ 
   ゝゝ、,,ニ=====ニ/r'⌒;   rー`ー' ,! リ::::::::::::ノ
    i`''''y--- (,iテ‐,'i~´ゝ''´    ̄ ̄ヽ` :::::::::::ノ
    |  '、,............, i }'´       、ー_',,...`::::ィ'
 ●、_!,ヽ-r⌒i-、ノ-''‐、    ゝ`ーt---''ヽ'''''''|`ーt-'つ
    (  `ーイ  ゙i  丿   ;'-,' ,ノー''''{`'    !゙ヽノ ,ヽ,
    `ー--' --'` ̄       `ー't,´`ヽ;;;、,,,,,,___,) ヽ'-゙'"
                   (`ー':;;;;;;;;;;;;;;;ノ
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 みんな良く納得するなぁ…。
 
 また、スケールの大きなテーマだけにCGによる特殊効果も見所の一つ…なんですが…。歴史が書き換えられる、『時間の波』の表現など、おっ!と思う場面もあるにはあるんですが、白亜紀でハンティングされる恐竜の愛くるしさや、リッジレーサー?な未来カーの表現など、場面によって質がチグハグで、おや?と思う場面が多かったです。
 全体的に、演出も脚本も荒削りで、真面目に観てもいいのかどうか良くわからない映画でした。
 
 コロコロ場面が変わるのは展開が早くて楽しいんですが、その反面、仲間(?)がクリーチャーに襲われて死んでも、すぐ次のシーンでは頭を切り替え(忘れてる?)、悲しむそぶりを微塵も見せない大変前向き(棒)な主人公のおかげで、常に妙な安心感がつきまといます。
 危機は世界規模で起きているはずなのに、ハラハラドキドキ度合いは4畳半くらい。別に誰が死んでも、もうどうでもいいや、と思っちゃいました。
 
 ただ、爬虫類と霊長類が融合したようなクリーチャーデザインは物珍しさもあり、素晴らしいと思いました。陸、海、空と、クリーチャーのバリエーションが豊富な点も面白かったと思います。
 
 突込みどころを見つけたら、大喜びで突っ込んで楽しむ、そんな、新しいジャンルの映画だと思います。場面場面を切り取れば面白い場面が無い訳では無いので、暇で仕方ない、と言う方にはオススメの一本。
 期待せずに観れば、暇つぶしにはなるかと思います。

【蛇足】
  

  • 予告編でwktkを煽った、大量の虫がドアから沸く↑のシーン、その解決方法はなんと『逃げてドアを閉める』(ネタバレにつき反転)!……エー!…そんなんで良いの!??
  • みんな、脚本に書いてある通りに大急ぎで演技をしてるような印象。はい!書いてる通りにやったから良いでしょ!みたいな。
  • なんか有耶無耶な感じでハッピーエンドで終わってますが、タイムパラドックスを考えると夜も眠れません。曲げられた未来で頑張った主人公はこの先どうなるの??訳が解らん。